「夜になるとネットが遅い」とよく言われます。原因は利用者が集中する時間帯の混雑(輻輳)だとされていますが、実際にどれくらい遅くなるものなのでしょうか。編集部の自宅回線を2026年7月2日から7月31日までの30日間、5分おきに計測したところ、多くの日で昼と夜のping(応答速度)にほとんど差はありませんでした。一方で、はっきり悪化した日も1日ありました。この記事では、伝聞ではなく実測の記録として、その両方を事実だけで示します。

この記録の条件と限界(先にお読みください)
計測回線=ソフトバンク光(コラボ光。NTTのフレッツ光網を借りて各社が提供する光回線)・兵庫県・マンション・Wi-Fi接続のn=1回線による自宅計測です。「どの回線でも夜間の混雑は起きない」という一般化はできません。数値はすべて実測ラボのデータ(data/pinglab/SUMMARY.json)をそのまま使用し、記事用に丸めたり良く見せたりする加工はしていません。公開している情報は回線名・地方・住まいタイプまでで、住所や市区町村・IPアドレスは記録も公開もしていません。

「夜はネットが遅い」と言われる理由

「夜になるとネットが遅くなる」という説明の多くは、利用者が集中する19時台〜23時台に通信量(トラフィック)が増え、回線が混雑(輻輳)するというものです。とくに、NTTのフレッツ光網を借りて各社が提供するコラボ光(ドコモ光・ソフトバンク光など。フレッツ網を他の利用者と共有する光回線)は、従来のPPPoE接続だと網の出入口にあたる網終端装置が混みやすく、夜間に速度が落ちやすいとされています。対策として案内されるのが、網終端装置を経由しないIPoE(IPv6 IPoE。従来のPPPoE方式が混雑しやすい網終端装置を迂回して接続する方式)接続への切り替えです。この仕組み自体は事実で、当サイトのネットが遅い原因の切り分け方でも同じ説明をしています。ただし、この理屈が「自分の回線で毎晩起きているか」は別問題です。編集部はここを実際に測ってみることにしました。

編集部の自宅回線を30日間、5分おきに測ってみた

計測方法はシンプルです。編集部の自宅回線(ソフトバンク光・IPoE方式で接続)から、5分おきに固定ターゲット(Cloudflare 1.1.1.1・Google 8.8.8.8)へping10発を送り、応答速度(ping)・ばらつき(ジッター)・パケットロス・宅内ルーターまでの遅延(宅内gateway)を記録し続けています。pingとは、操作がサーバーに届いて返ってくるまでの往復時間をミリ秒(ms)で表した数値で、数字が小さいほど応答が速いことを示します。今回はこのうち2026年7月2日〜7月31日の30日間を対象に、昼(10〜17時)と夜(21〜23時、いわゆるゴールデンタイム)の平均pingを比べました。計測・集計の全データは実測ラボで毎日自動更新しています。

結果:ほとんどの日で、昼と夜の差はわずかだった

30日間のうち、昼夜の比較ができた29日間(初日は夜のデータのみのため対象外)を集計すると、差が±1ms以内に収まった日が21日(29日中72%)ありました。夜の方が昼より遅かった日は11日、夜の方が昼と同じか速かった日は18日で、むしろ夜の方が速い日の方が多いという結果です。30日間のping(全体平均)は約17.5〜19.8msの範囲に収まり、ジッターはおおむね3.5〜4.6ms、パケットロスは全期間で0〜0.2%と、際立って不安定な夜はほとんどありませんでした。「フレッツ網系のコラボ光でも、IPoE接続であれば夜間の悪化がほとんど出ないことがある」——これが、少なくともこの1回線・30日間では観測された事実です。

日付昼10-17時avg夜21-23時avg
2026-07-1918.4ms19.1ms+0.7
2026-07-2018.7ms17.9ms-0.8
2026-07-2118.1ms18.0ms-0.1
2026-07-2218.5ms18.1ms-0.4
2026-07-2318.9ms18.8ms-0.1
2026-07-2418.9ms19.6ms+0.7
2026-07-2518.5ms18.5ms+0.0
2026-07-2619.2ms18.3ms-0.9
2026-07-2719.1ms17.7ms-1.4
2026-07-2819.1ms17.3ms-1.8
2026-07-2919.1ms18.8ms-0.3
2026-07-3018.6ms18.8ms+0.2
2026-07-3118.9ms28.0ms+9.1

30日間のうち直近13日を抜粋(全30日分は実測ラボで公開)。差=夜21-23時avgから昼10-17時avgを引いた値。プラスが大きいほど夜に悪化したことを示す。

唯一はっきり悪化した日:2026年7月31日に何が起きたか

30日間で唯一、明確な悪化が観測されたのが7月31日です。昼18.9msに対し夜は28.0ms、差は+9.1msで、この30日間では突出した数字でした。ジッターも5.6msとふだんの3.5〜4.6msよりやや高く、パケットロスも0.2%とわずかに発生しています。宅内ルーターまでの遅延(宅内gateway)は6.8msでふだんと大きくは変わらなかったため、この日の悪化は宅内側というより回線・プロバイダ側で起きた可能性が高いと見ています。「夜は混雑して遅くなることがある」という一般的な理屈と一致する、この30日間で唯一の実例です。

測り続けていると、こういう日も来る(2026年8月1日の例)

30日間の集計対象には含めていませんが、集計期間の翌日にあたる2026年8月1日には、これまでで最も大きな悪化が観測されました。昼31.3ms・夜33.9ms・ジッター26.6msで、宅内ルーターまでの遅延(宅内gateway)も15.9msと、ふだんの約3倍まで悪化していました。7月31日と違い、この日は外部への応答だけでなく宅内ルーターまでの遅延まで同時に悪化しているのが特徴です。これは、回線やプロバイダの外側の問題というより、Wi-Fi環境や計測機側に何らかの負荷があった可能性を示しています(この記録だけで断定はできません)。ここに実用的な結論があります。「夜だけ遅い」と感じたときは、外部への応答(回線側の指標)と、宅内ルーターまでの応答(宅内gatewayのような宅内側の指標)を同時に見ると、原因が回線側か宅内側かの手がかりになる、ということです。

だから「夜は混雑する」と決めつけず、まず自分の回線を確かめよう

当サイトのネットが遅い原因の切り分け方でも、「夜や休日だけ遅い」場合の主な原因は混雑だと説明しています。それ自体は今回も否定していません。今回分かったのは、同じフレッツ網系のコラボ光でも、IPoE接続などの条件が揃っていれば、夜間の悪化がほとんど出ない日が多いこともあるということです。つまり「夜だけ遅い=自分の回線も必ず混雑している」と決めつけず、まず自分の回線がどうなのかを確かめるのが遠回りに見えて確実です。原因の切り分け方(1台だけか全部か、有線でも遅いか等の60秒チェック)はこちらの記事に、マンションでVDSL(配線方式のひとつ。建物の共用部までは光でも、各戸へは電話線で届ける方式で、上限が最大100Mbps程度にとどまる)が原因のケースは「光なのに遅い」原因はVDSLかもに、宅内側の機器やケーブルがボトルネックになっているケースは10ギガにしたのに遅い原因にまとめています。

この記録の限界(もう一度、正直に)

ここまでの数字は、あくまで編集部の自宅にある1回線・30日間の記録です。回線の種類(フレッツ網系のコラボ光)・地域(兵庫県)・住まい(マンション)・接続方式(Wi-Fi)・計測方法(5分おきのping10発)という条件のもとでの実例であり、「どの回線・どの地域でも夜間の混雑は起きない」ということを示すものではありません。数字を良く見せる加工はしておらず、悪化が観測できればそのまま掲載します。計測は現在も続けており、最新の全データは実測ラボで毎日自動更新しています。

追記(2026年8月6日):8月に入り計測値の水準が変わっています

この記事が対象にしているのは2026年7月2日〜7月31日の30日間です。ところが2026年8月1日以降、この定点計測の水準が変わりました。8月1〜5日の5日間は、外部への平均ping(net.all)が日ごとに約31.0〜33.8ms、ジッターが約24.7〜29.0msで推移し、宅内ルーターまでの遅延(宅内gateway)も約15.2〜16.9msとなっており、いずれも7月の30日間の水準(外部ping約17.5〜19.8ms・ジッター約3.3〜5.6ms・宅内gateway約5.1〜6.8ms)から明確に上振れした状態が続いています。外部への応答と宅内ルーターまでの応答が同時に悪化していることから宅内側の要因が疑われますが、原因は特定できていません(編集部に心当たりのある環境変化はありません)。時間帯による偏りも確認しましたが、8月1〜5日はいずれも昼(10〜17時)と夜(21〜23時)の平均pingの差が小さく(最大でも2.6ms程度)、1日の中の時間帯別の推移を見ても特定の時間帯だけが悪化しているようには見えず、終日にわたって水準そのものが上がっている状態です。それでも、この記事の結論(昼と夜の差は小さい)は8月に入ってからのデータでも変わっていません——水準が上がった中でも、昼夜の差自体は引き続き小さいままです。最新の生データ・日別の推移は実測ラボで毎日更新しています。

よくある質問

Q. 夜になるとネットが遅いのは本当ですか?

回線の種類や条件によります。編集部の自宅回線(フレッツ網系のコラボ光・IPoE接続)を30日間・5分おきに計測したところ、29日中21日は昼夜の差が±1ms以内で、夜の方が昼と同じか速かった日の方が多い結果でした。ただし1回線・30日間の記録であり、すべての回線に当てはまるとは限りません。まずは自分の回線で夜と昼を比べてみるのが確実です。

Q. この実測データはどこで見られますか?

計測を続けている全期間のデータは実測ラボのページで毎日自動更新しています。日付ごとの昼夜平均ping・悪化幅・ジッター・パケットロス・宅内gatewayの遅延を確認できます。

Q. 夜だけ自分のネットが遅いと感じます。何を確認すればいいですか?

まず「1台だけか全部か」「有線でも遅いか」「再起動で直るか」を確認します。全端末が遅く、有線でも改善しないなら回線側の混雑を疑い、IPv6(IPoE)接続への切り替えや独自回線(NTTのフレッツ網を使わない自前の回線)への乗り換えが選択肢になります。詳しい切り分け手順はネットが遅い原因の切り分け方で解説しています。

Q. コラボ光は夜間の混雑に弱いのですか?

NTTのフレッツ光網を共有するコラボ光は、従来のPPPoE接続だと網終端装置が混みやすく、夜間に速度が落ちやすいとされています。ただし今回の実測のように、IPoE接続などの条件が揃っていれば夜間の悪化がほとんど出ない日が多いこともあり、契約している回線・接続方式によって実際の状況は変わります。

Q. 宅内ルーターまでの遅延(宅内gateway)を見ると何が分かりますか?

宅内ルーターまでの応答が同時に悪化していれば、Wi-Fi環境や計測機側など宅内に原因がある可能性が高く、外部への応答だけが悪化していれば回線・プロバイダ側の可能性が高いという切り分けの手がかりになります。編集部の実測でも、外部だけが悪化した日と、宅内gatewayも同時に悪化した日の両方が観測されています。

まとめ

※本記事は広告(PR)を含みません。編集部の自宅回線1台による定点計測の記録で、特定の回線・地域・住まい・接続方式における実例です。数値はすべて実測データをそのまま使用し、加工・演出はしていません。計測方法・最新の全データは実測ラボをご覧ください。